サーモニックENGでは、独自の高温電気炉技術を活かしカーボン炉やマルチ雰囲気炉、メタル炉、塩素炉など様々な電気炉(加熱炉)を取り扱っております。
下記に掲載していない加熱炉もございますので、詳細は弊社までお問い合わせいただくか、Thermonik Co., Ltd.(Korea)のHPを確認してください。
小型メタル炉
メタル炉とは
メタル炉は、炉内の構成部材(ヒーター・断熱材・炉壁)をすべてタングステンやモリブデンなどの金属で構成した高性能加熱炉です。通常のアルミナやカーボン製炉では避けられない微量コンタミネーションを排除し、超高純度・高温・クリーンな焼成環境を実現します。特に、真空または不活性ガス雰囲気での超高温プロセスに最適です。研究開発から量産まで、最もシビアな温度・雰囲気管理が求められるプロセスに対応します。
メタル炉の原理
- 加熱方式:タングステンやモリブデン製のヒーターを通電加熱し、金属の高い熱伝導性で炉内に均一な温度分布を形成。
- 雰囲気制御:金属ヒーターは酸化しやすいため、真空または不活性ガス(N₂、Arなど)で運転。
- クリーン構造:セラミック断熱材を使用せず、全金属構造とすることで真空中でも発塵・ガス放出を最小化。

特徴
炉内がメタル材料で構成されていることにより、断熱材などによる炉内の汚染を低減可能な加熱炉です。
真空もしくはN₂などの不活性雰囲気での1800℃の高温焼成が可能であるため、高温酸化を防止しながら材料を焼成することが可能です。
- 高純度環境
- 炉材として用いられる炭素・アルミナ由来のコンタミがない
- 材料本来の特性を損なわない焼成が可能
- 高精度温度制御
- 金属ヒーターの高熱伝導性で±数℃レベルの均一温度
- 超高温対応
- 最大1800℃まで安定運転
- 真空・不活性雰囲気対応
- 酸化・窒化のリスクを回避
- 低アウトガス・低発塵
- 半導体・光学部品など超クリーン用途に最適

適用分野
- 半導体材料の前処理(SiC基板、酸化物単結晶など)
- 高純度粉末(酸化物、窒化物、硼化物)の合成
- 高精度温度プロファイルが必要な材料評価
- 炭素や窒化による炉材劣化を避けたいプロセス
- 表面分析前の試料加熱処理


メタル炉の仕様
加熱ゾーン | 140mm×140mm×170mmD※ |
最高温度 | 1800℃ |
真空度 | 10-6Pa |
雰囲気 | 窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気 |
ヒーター | タングステンロッドヒーター |
断熱材 | タングステン+モリブデン |
必要UTY | 電力25kVA, 冷却水, プロセスガス, エアー |

当社のメタル炉は、加熱ゾーンが小型で、真空・超高温に対応できるため、特に次のような用途に適しています。
- 研究・開発用途(少量サンプルの迅速評価)
- 材料開発段階での試験焼成
- 分析用試料の前処理
- 高価な試料の高純度焼成(材料ロスが少ない)
キーワード
真空、不活性ガス雰囲気、超高純度、高温焼成、コンタミ防止、安定した温度制御、均一温度分布、シビアな温度管理、粉体材料焼成、研究・開発用途
小型カーボン炉
カーボン炉とは
カーボン炉は、炉内部のヒーター・断熱材・炉壁すべてをグラファイト(炭素)で構成した、超高温対応型加熱炉です。
通常の電気炉では到達困難な 3000℃ 級の高温域での加熱が可能で、かつ炉内酸素濃度を極限まで低く抑えることができます。
高結晶化が必要な炭素材料や、超高融点金属の焼結など、高温・低酸素が不可欠なプロセスに最適です。

カーボン炉の原理
- 加熱方式:グラファイト製ヒーターに通電して直接加熱し、輻射熱と伝導熱で炉内全体を昇温。
- 雰囲気制御:高温域では酸化反応が進むため、ArやN₂などの不活性ガス雰囲気で運転し、酸素濃度を極限まで低減。
- 高温対応構造:炉内構成部材すべてを高純度グラファイトで製作し、3000℃までの安定加熱を実現。
特徴
- 超高温対応
- 常用2800℃、最高3000℃まで安定運転可能。
- 低酸素雰囲気
- 炉内が全グラファイト構造のため、酸素濃度を極限まで低減でき、酸化を防止。
- 高結晶化処理に最適
- 炭素材料の結晶化度向上により、寿命や性能を大幅アップ。
- 幅広い材料対応
- セラミックスの組成変化試験や、超高融点金属(W, Ta, Mo)の焼結にも対応。

適用分野
- 炭素材料の高結晶化処理(電極材、C/Cコンポジットなど)
- 高温で組成変化を伴うセラミックス(Si₃N₄、B₄Cなど)の焼成
- 超高融点金属(W, Ta, Mo)の焼結・溶融
- 研究用途での高温+不活性雰囲気評価試験
- 耐酸化性・耐熱性材料の性能評価


カーボン炉の仕様
加熱ゾーン | 直径200mm×130mmH※ |
最高温度 | 常用2800℃, 最高3000℃ |
雰囲気 | アルゴン, 窒素(~2400℃まで使用可能) |
ヒーター | グラファイト丸形ヒーター |
断熱 | グラファイト成型断熱材 |
必要UTY | 電力66kVA, 冷却水, プロセスガス |

当社のカーボン炉は比較的コンパクトな加熱ゾーンを持ち、超高温+不活性雰囲気条件での少量試料評価や研究用途に最適です。特に以下のようなお客様にお勧めします。
- 材料開発段階での試験焼成
- 超高融点金属や耐熱セラミックスの試験
- 高価な試料の高結晶化・性能向上評価
- 大型炉では過剰な条件を、小型で効率よく再現したい場合
キーワード
超高温(2800〜3000℃)、高結晶化、グラファイト構造、低酸素雰囲気、不活性ガス雰囲気(Ar、N₂)、超高融点金属焼結(W、Ta、Mo)、セラミックス焼成(Si₃N₄、B₄C)、酸化防止加熱、研究・開発用途
マルチ雰囲気炉
マルチ雰囲気炉とは
マルチ雰囲気炉は、真空や不活性雰囲気に加え、NH₃・H₂・O₂など多様な雰囲気ガスを流通させながら加熱できる汎用型炉です。さらにガスを加湿して湿潤雰囲気での焼成も可能なため、幅広い反応条件に対応します。材料の還元、酸化、窒化、加湿処理など、複雑な雰囲気制御が求められる研究・製造現場で威力を発揮します。

マルチ雰囲気炉の原理
- 雰囲気切り替え:高気密構造の炉体と精密ガス導入系により、処理中に任意のガス種へ切り替え可能。
- 加湿機構:導入ガスを加湿器(Wetter)に通すことで水蒸気を含ませ、湿潤雰囲気での加熱を実現。
- 安全性確保:可燃性ガス(H₂・NH₃)使用時には除害装置(オプション)で安全処理。
特徴
- 真空、不活性雰囲気(N₂、Ar)、酸化雰囲気(O₂)、還元雰囲気(H₂、NH₃)まで対応
- 加湿装置(wetter)による特殊熱処理が可能
- 反応系で発生する可燃性ガスも安全に処理できる除害装置をオプション追加可能
- 最高温度1700℃まで対応し、昇温速度は10℃/min
- アルミナシースヒーター+アルミナ断熱材により、耐食性と安定加熱を両立

適用分野
- 金属材料の還元焼成(H₂雰囲気)
- 酸化処理(O₂雰囲気)
- 窒化反応(NH₃雰囲気)
- 加湿雰囲気での触媒前処理や水酸化反応
- 焼成時に反応性ガスを発生する材料評価
- 研究・開発における多条件比較試験

マルチ雰囲気炉の仕様
使用温度 | 100℃~1700℃ |
雰囲気 | 大気, N2, アルゴン, アンモニア, 酸素などの各種ガス |
ヒーター | アルミナシースヒーター |
断熱材 | アルミナ成型断熱材 |
試料台 | アルミナ台板 |

当社のマルチ雰囲気炉は小型・高気密設計により、大学・研究所や企業の材料開発部門において、試験条件を素早く切り替える比較実験に最適です。多様な雰囲気ガス+加湿機能を組み合わせることで、複雑な反応条件下での焼成プロセスを1台で再現可能です。
キーワード
真空、不活性ガス雰囲気(Ar、N₂)、還元雰囲気(H₂、NH₃)、酸化雰囲気(O₂)、加湿雰囲気、雰囲気切替、複合熱処理、材料評価、研究・開発用途、安全ガス処理
小型管状炉
管状炉とは
管状炉は、円筒状の加熱部(セラミックス反応管)にサンプルを配置し、様々な雰囲気ガスを流しながら加熱処理を行うコンパクトな炉です。小型・低コストでありながら、流量・圧力・温度の測定が可能なため、反応条件の評価や試作研究に適しています。

管状炉の原理
- 円筒型加熱構造:反応管全体を均一に加熱できるため、ガス流通下での安定した温度分布を実現。
- 多様な雰囲気対応:不活性ガスをはじめ、条件に応じた各種ガスを供給可能。
- 物温測定機能:入口側から熱電対を差し込み、サンプルの実温度を測定可能。発熱反応や温度依存性の高いプロセスに対応。
特徴
- 各種ガスを流しながら加熱でき、雰囲気条件の自由度が高い小型・安価で研究開発や試作用途に適する
- 熱電対を差し込み、サンプルの実温度を直接測定可能
- 反応管はアルミナ製で、耐食性・耐熱性に優れる(※急激な温度変化は不可)

適用分野
- 少量サンプルの雰囲気試験(ガス流通下での焼成評価)
- 材料の反応性評価(流量・圧力・温度の同時計測)
- 発熱反応やガス発生を伴うプロセスの研究
- ガス流量条件による焼成挙動の比較試験
- 新規材料の初期評価・基礎研究

管状炉の仕様
加熱ゾーン | 120mmφ×500mmL※ |
管サイズ | 70mmφ×1000mmL※ |
使用温度 | 1200℃ |
雰囲気 | アルゴン, 窒素 |
ヒーター | カンタルA1 |
必要UTY | 電力12kVA, 3相200V |

当社の管状炉はコンパクトかつ高い計測機能を備えており、ガス流通下での材料反応評価に特化しています。オプションにはなりますが、サンプル温度・ガス流量・圧力などの計測が可能なため、反応メカニズム解析や新規素材の試験条件の最適化に最適です。
キーワード
管状炉、雰囲気試験、小型加熱炉、流量計測、圧力計測、物温測定、不活性ガス、材料評価、反応挙動解析、研究開発用途
小型塩素炉
背景
近年、半導体デバイスの微細化や電池の高性能化が進展する中、使用される粉体原材料に対する品質要求は急速に高度化しています。
特に、原料や製造プロセスに起因する金属コンタミネーション(Fe、Cu、Niなど導電性異物)は、重大な不具合につながるため、ppm~ppbレベルでの厳密な管理が求められます。



一般的な金属除去の方法
- 塩酸や硫酸などの酸を用いて金属を溶解
- 均一に除去できるが、多量の排水が発生。禁水性の製品には適用困難
- 強力な電磁脱鉄機を使用して除去
- 数十μm以下の微小な金属や非磁性金属の除去ができない
塩素炉の原理
塩化揮発法
塩化揮発法とは、金属酸化物や鉱石などの無機物に塩素ガス(Cl₂)や塩化水素(HCl)を反応させ、揮発性の金属塩化物に変換して分離・精製する方法です。
【特徴】
- 揮発性の違いを利用するこで、選択的に金属を分離可能
- 乾式プロセスであり、湿式と比べて廃液処理が少ない

反応イメージ


ハロゲンガス雰囲気に対応可能な炉の現状
- 高温雰囲気下では、Cl2やHClによって設備が腐食するため、これらを導入することは困難
- 炉材にアルミナを使用した管状炉など、耐腐食性を備えた小型電気炉での検討に限定
- 管状炉の場合、微加圧雰囲気であるため漏洩時に重大な災害につながるリスクが存在

塩素炉の特徴
- サーモニック独自の技術により、Cl2、HClガスなどのハロゲンガス対応 (CE、SEMI、UL規格認証)
- 棚板ヒーター採用により均一加熱が可能
反応中は常に減圧雰囲気のため
- サンプル内部までCl2ガスが拡散し高効率の反応が可能
- 発生した塩化物の沸点を降下でき、より低温での処理が可能
- Cl2やHClガスの漏洩リスクを低減
運転例

これまでの適用先
- カーボンナノチューブ(CNT)の純化:CNT合成時の金属触媒(Fe, Co, Ni, etc)の除去
- サセプターの洗浄(GaN) :サセプター治具上に蓄積したGaNの除去
- 相転移温度の低下 :セラミックスの結晶相転移を制御



禁水性の製品や多量の廃液を発生させたくない金属除去プロセスや反応制御炉として適用
さらなる応用
- レアメタルの選択的分離/回収
- 超高純度化が必要な製品
- 新素材開発
- 材料の表面改質(疎水性→親水性)
- 超合金などの腐食評価


小型塩素炉の仕様
炉内寸法 (W×D×H) | 200mm×200mm×200mm |
外寸法 (W×D×H) | 1000mm×1000mm×2100mm |
ガス雰囲気 | Cl2, HCl, N2, Ar, H2 |
温度 | ~1400℃ |
真空度 | 数Pa |
必要UTY | 冷却水, 電力, N2 or Ar, プロセスガス |
運転方式 | バッチ方式 |
※仕様は開発中のもので、予告なく変更される場合があります。
お客様側での面倒な準備は不要です。UTYを接続すれば、そのまま使用可能なオールインワン設計です。
